03. 常圧蒸留(じょうあつじょうりゅう)
古来、乙類焼酎は常圧蒸留のみでした。芋、米、麦などの原料の違いによりその酒質は独特の香味を持ち、それまでその地域のみで愛飲されていましたが、ディスカバージャパンの風潮とともに、焼酎ブームが起こり、常圧蒸留の芋焼酎が地方の素朴な旨味を新しい発見として全国にファンを広げました。ところがその原料の個性があまりにも強く、現在では、鹿児島の芋、黒糖、沖縄の泡盛だけが従来の常圧蒸留機を用いており、その他の地域は一部を除いて大部分が新しい減圧蒸留という方法が使われ、ライトタイプの焼酎と化していきました。
常圧蒸留による焼酎の旨味は次のような理由によります。蒸留温度は90~100℃であり、アルコール以外の成分が多量に留出してきます。その成分は原料特性成分であり、旨味成分です。また3時間以上も高温下にあるため、蒸留中に二次生成物も生じ留出します。それが故に個性が強く、旨味のある焼酎となります。したがって本格的な香味を欲する人はこの常圧タイプが好まれ、いわば通向きの焼酎になります。
また貯蔵用として考えた場合、常圧蒸留した焼酎が適しています。それは貯蔵の間に独特の香りは穏やかとなり、本来持っている深い味わいは更に丸みを帯びて、樫樽貯蔵すると木の香味と調和を保つことができます。原酒のもつ特性が貯蔵により熟成され、蒸留方法(分割蒸留、再留など)、ろか程度を変えることにより、いろいろな原酒を貯蔵したものをブレンドすると、更におもしろい香味を呈します。