04. 減圧蒸留(げんあつじょうりゅう)

元来乙類焼酎は常圧蒸留製品でした。日本人の食物に対する嗜好はライト化の傾向を示し、酒類においても清酒のように淡麗化の方向でに向かいました。芋焼酎は香りは個性があるものの、特にお湯割りで旨味を発揮し、キレが良い。一方米製、麦製などの穀類は香りに個性があるうえに味の方も濃醇でそれを軽くしようと、炭素処理に頼っていたため、重く、後味が残るものでありました。従来はその深い味わいを楽しんでいましたが、消費者の嗜好がライト化の傾向を示している中、従来の常圧蒸留では消費者の希望にかなえられる酒質は旧球摩焼酎の如く難しいことでありました。

そこで登場したのが減圧蒸留です。この場合低温発酵を行なった後、低温にて蒸留をするため、清酒のように軽やかな香気成分がそのまま留出してくるので、ライトな酒質となります。一方味の方は淡泊なものとならいます。減圧蒸留とは、蒸留装置全体を真空に保ちながら加熱すると、富士山のうえで通常の釜を使いごはんを炊くように、低い温度で沸騰が始まります。真空度を変えることにより、沸騰する温度は任意に設定できるますが、通常40~60℃で蒸留されています。清酒の香りのような低沸点の成分が、蒸留機外へ逃げずに冷却され、アルコールに溶けて出てきます。また低温下にあるので二次生成物が少なく、独特の香りも生じません。原料の特性や高級脂肪酸の深い味わいは、比較的温度の高い沸点であるので、滅圧蒸留の場合には留出しにくいのです。したがって製品の酒質は香りが軽く、原料特性に乏しく味はうすくなります。

減圧蒸留の製品はそのままでライト化嗜好にマッチし、最近の穀類焼酎の主流を占めています。ただ残念ながら味がうすいため、貯蔵してもアルコールが丸くなるだけで常圧蒸留のようになかなか深い味わいとはなりません。しかし、蒸留温度を常圧蒸留に近いところで蒸留し、味を幾分引き出した焼酎を造り出すことは可能です。麦焼酎のごときは完全な常圧蒸留よりも、この方法によって原酒を造り貯蔵したほうが、香味を十分に持つ熟成した貯蔵酒を得ることができます。

このように一般的には常圧蒸留の製品は通向き、減圧蒸留の製品はライト派でありますが、それぞれに一長一短があり、両者の欠点を補う折衷案も一つの方法です。前述のようなやや高温での減圧、また常圧と減圧のブレンド等も考えられるようになりました。