10. 麹の役割
蒸米にカビ(麹菌)を繁殖させたものを麹といいます。蒸米中のデンプンやタンパク質を、酵母が利用できるようにプドウ糠やアミノ酸に分解する働きをします。麹の本体は、アミラーゼ、プロテアーゼといった酵素で構成されており、この酵素が糖化をします。また、ピタミンなど酵母の栄養源となる物質も作っています。清酒らしい香味、蒸米の溶解に必要な酵素と深く関与することから、酒質への影響はたいへん大きいです。
山田錦や五百万石といった酒造好適米には、でんぷんが75%、たんぱく質が5~6%含まれていますが、麹菌はこれらを分解する酵素をバランスよく生産してくれます。麹の重要性はまさにここにあります。清酒には黄麹、焼酎には黒麹などが用いらます。
製麹は、28度前後の蔵の中で最も暖かい部屋で行われます。蒸米上に撒かれた麹の胞子は、温度と湿度により発芽し、次第に米の表面に菌糸
を伸ばします。菌の生育が盛んになると蒸米の温度も上昇するので、温度管理が必要です。温度・湿度をうまくコントロールし、良い麹をつくるのが杜氏の腕の見せどころで、酵素の作られ具合を手で握ったり、香りをかいだり、口に含んだりして菌糸の生え方を検討していくのです。
「一麹、二翫、三造り」といわれるように、酒造りで最も重要な行程が、麹づくりです。製麹には、伝統的で、1製麹単位が1.5KG程度の「麹蓋法」、その1単位を15KGから40KGと大きくした「床麹法」、自動または半自動の「機械製麹法」と大きく分けて3種類あります。
麹造りには2昼夜が必要で、麹が生育する最中に、酸素の供給や熱の発散、水分の除去など数多くの手入れが必要です。現在では、従業員の不足や夜間作業をなくすために、製麹機によるいろいろな自動化が進んでいます。