手間がかかる酒米づくり
●栽培が難しい酒米
酒米は食用米に比べると、大粒で穂が長いため倒れやすいという性質があります。
病虫害にも弱いため栽培はたいへん難しいとされています。また、背丈が高いため
食用米用につくられた機械では作業がしにくく、刈り入れなどで手作業を余儀なく
されることもあるのです。
その分、食用米に比べると値段は.二〜四割高くなっています。山田錦は一般の
自主流通米の平均価格より、60kgあたり約9000円(兵庫県経済農業協同組合
連合会調べ、平成5年度)も高く3万円もします。
●還暦を迎える、山田錦
酒造好適米として名高い山田錦は、昭和十一年に誕生し、来年還暦を迎えます。
「山田穂」を母に、「短棹渡舟」を父として人工交配により生まれました。栽培
に適した地域で代表的なのは、兵庫県中央部。地層は粘上質で山間部という複雑
な地形のところです。酒造好適米としての条件をよく満たしていて、淡麗で香り
がよく、貯蔵酒としても味に奥行きが出てくるとの評判です。
●奇跡の酒米、
雄町 明治四十一年、岡山県赤盤郡赤坂町で生まれた雄町。大粒心白を持つ
雄町は、昭和初期に吟醸酒づくりに活躍。しかし、農業の機械化や経済性を求
める傾向のなかで、婆を消していきました。ところが、地元で細々と栽培を続
けていた農家があり、昭和58年ついに酒米としてよみがえったのです。
●酒米づくりにこだわる
酒米づくりに関して、各地で新しい動きが見られます。ひとつは地元の米と水
で酒をつくるというもの。その土地の風土を活かした酒づくりは、村おこしや町
おこしの一環ともなっています。もうひとつは、有機栽培や低農薬栽培の導人です。
どちらもいま以上に手がかかりますが、より安全で良質の酒をつくるためには
努力を惜しまない地元の心意気が感じられます。