元来乙類焼酎は常圧蒸留製品でした。日本人の食物に対する嗜好はライト
化の傾向を示し、酒類においても清酒のように淡麗化の方向でに向かいまし
た。芋焼酎は香りは個性があるものの、特にお湯割りで旨味を発揮し、キレ
が良い。一方米製、麦製などの穀類は香りに個性があるうえに味の方も濃醇
でそれを軽くしようと、炭素処理に頼っていたため、重く、後味が残るもの
でありました。従来はその深い味わいを楽しんでいましたが、消費者の嗜好
がライト化の傾向を示している中、従来の常圧蒸留では消費者の希望にかな
えられる酒質は旧球摩焼酎の如く難しいことでありました。
そこで登場したのが減圧蒸留です。この場合低温発酵を行なった後、低温
にて蒸留をするため、清酒のように軽やかな香気成分がそのまま留出してく
るので、ライトな酒質となります。一方味の方は淡泊なものとならいます。
減圧蒸留とは、蒸留装置全体を真空に保ちながら加熱すると、富士山のう
えで通常の釜を使いごはんを炊くように、低い温度で沸騰が始まります。
真空度を変えることにより、沸騰する温度は任意に設定できるますが、通常
40〜60℃で蒸留されています。清酒の香りのような低沸点の成分が、蒸留機
外へ逃げずに冷却され、アルコールに溶けて出てきます。また低温下にある
ので二次生成物が少なく、独特の香りも生じません。原料の特性や高級脂肪
酸の深い味わいは、比較的温度の高い沸点であるので、滅圧蒸留の場合には
留出しにくいのです。したがって製品の酒質は香りが軽く、原料特性に乏し
く味はうすくなります。
減圧蒸留の製品はそのままでライト化嗜好にマッチし、最近の穀類焼酎の
主流を占めています。ただ残念ながら味がうすいため、貯蔵してもアルコー
ルが丸くなるだけで常圧蒸留のようになかなか深い味わいとはなりません。
しかし、蒸留温度を常圧蒸留に近いところで蒸留し、味を幾分引き出した焼
酎を造り出すことは可能です。麦焼酎のごときは完全な常圧蒸留よりも、こ
の方法によって原酒を造り貯蔵したほうが、香味を十分に持つ熟成した貯蔵
酒を得ることができます。
このように一般的には常圧蒸留の製品は通向き、減圧蒸留の製品はライト
派でありますが、それぞれに一長一短があり、両者の欠点を補う折衷案も一
つの方法です。前述のようなやや高温での減圧、また常圧と減圧のブレンド
等も考えられるようになりました。
減圧蒸留