農家の手で丹念に育てられ、一人前に成長した米は、ビタミンやたんばく質、灰分、
脂肪などでしっかりと身を包んでいる。だが、それもつかの間、酒造家の手に渡った
とたん、身にまとっていたものをすっかりはぎとられ、心白だけにされてしまう。
なぜ、米はそんな運命にあるのでしょうか。

 酒造りの工程には精米という大切な段階があります。ここで米を裸にしてしまうの
ですが、要するに米が身にまとっている成分がじゃまなのです。まず、ビタミンなどの
栄養のかたまりである胚芽。これは酒母や醪の中で酵母の増殖を異常に高める原因と
なるもの。したがって、これがあると酒母や醪における糖化と増殖のバランスがくずれ、
原料米のもっているでんぷんの消化が十分に進まなくなります。 

 また、外層部に多く含まれるたんばく質や灰分、 脂肪も酒造りの大敵です。 
特にたんばく質が分解されてできるアミノ酸は、麹の糖化を弱めてしまいます。 
酒質を高めるためには、ぜひとも米を裸にし、心白だけになってもらう必要が
あるわけです。普通、酒米は70%ほど精米されますが、吟醸洒のように香りが高く淡麗な
酒造りには、精米歩合50%以下という高精白米が使われています。米が裸になるのは、
ひとえに美酒となって生まれ変わるため。われわれ愛酒家のためにも、じっと辛抱して
もらうしかないのです。
米を裸にするのはなぜ?