電子レンジによるおいしい「お燗酒」

●はじめに
  
 最近、お燗酒の魅力をPRして清酒の消費減退に歯止めをかけようとする動きが
  酒類業界内で活発化している。古来清酒は、お燗をして飲む習慣があり、「燗上
  がり」という言葉が示すように、清酒は燗をすることによりおいしさを増し、ま
  た悪酔いを防止する効果があることから、お燗さけの推進運動は大変、有意義で
  ある。
  従来、家庭で行うお燗は、鍋またはやかんを用いて湯煎で銚子を温める方法が一
  般的であったが、最近では電子レンジを用いる場合が多くなっている。湯煎法は
  温度管理に留意すれば理想的な燗酒ができるが、手間と時間がかかる欠点がある。
   これに対し、電子レンジ法は、時間を適切に設定すれば短時間に目的どおりの
  温度の燗酒とすることができるが、銚子の上部と下部の温度差が大きく、時には
  口部分が熱すぎて素手では持てない場合があり、逆に底部の酒は温度の上昇が不
  十分な傾向がある。そこで、筆者の経験から電子レンジを用いて湯煎法を凌ぐお
  燗の方法を紹介する。本法の利点は、銚子に清酒を注いでそのまま電子レンジで
  加熱すると細い首部分の温度が急昇寄るのに対し底部の温度の上昇が不十分にな
  るのを、銚子の中心より上部に当たる電磁波をアルミホイルで遮断して銚子の下
  部のみを加熱し、上部の清酒は対流によって加熱することにより銚子中の清酒の
  温度がほぼ一定になる点にある。

   

酒販ニュースに掲載された齊籐富男氏の寄稿文より

店主もやってみましたが「これはいいです」

●準備するもの
 @家庭用電子レンジ(定額高周波
  出力600ワット程度のもの)
 A銚子(容量150〜180ml、
  高さ150mm以下、金銀等金属によ
  る絵つけのないもの)
 B電子レンジ対応のポリプロビレ
  ン製マグカップ(高さ80mm内外、
  口径708mm内外)
 Cコッブ(ガラス製、外径がマグ
  カップ内に収まるもの)
 Dアルミホイル(幅30cm程度のも
  の)

●電磁波遮断器具の製法
 (略称・カンキャップ
 写真を見ればほぼご理解戴けると
 思われるので、要点のみ記す。
 @約30cm四方のアルミホイルの中心に
  コップを置き、縦に壁を付けながら
  コップの周囲に押しつけ、コップと
  同形のアルミホイル容器をつくる。
 Aコップを中に入れたままマグカップ
  に挿入してマグカップの内壁に密着
  させる。
 Bコップとアルミホイルを3mm程度持ち
  上げ、アルミホイルを外側に折り曲げ
  この部分をハサミで切り取る。
 Cコップをアルミホイルとともに一旦外
  に出し、アルミの外側にボンドを付け
  て再びマグカップ中に戻しコップを強
  く押して密着させる。
 Dコップを取り出しマグカップの外側に
  出ているアルミホイルのバリをハサミ
  で丁寧に切り取る(アルミのバリが電
  子レンジの内壁に触れると火花が出る)

●お燗の実施方法
 @銚子に清酒を注ぎ、前述のカンキャッ
  プを被せて電子レンジのターンテイブ
  ルの上に置く。この時、上部(カンキ
  ャップの底部)がレンジの天井部に触
  れていないこと、および回転中にアル
  ミのパリがレンジの内壁に触れないこ
  とを確認する。
 A加熱時間は、レンジに表示された時間
  より30%程度、長くする(銚子の容量
  およびカンキャップの帯状、目的とす
  る温度により異なるため、各自がテス
  トにより決める)。

※このカンキャップは一度作ると何度でも
 使えます。

準備するもの

アルミをコップの周囲に巻き付ける

そのままマグカップに挿入

アルミにボンドをつけ
再び挿入してバリを切る

カンキャップ完成

●内部温度の測定例
   湯煎法、電子レンジ法(キャップの有無別)による銚子の上部および下部の温度
  の測定結果を別表に示す。
●この方法の注意事項
   @金銀等の顔料費用いて美しい絵つけをした高級銚子は絶対に使用しない。
   A電子レンジ対応のポリプロピレン製マグカップは、空の状態で使用するため連
    続して長時間使用しない(変形のおそれあり)。
●むすび
   別表が示すとおり、銚子にカンキャップをして電子レンジで加熱すれば酒温はほ
  ぼ均一になる。しかも温度は時間で調節することが可能であることから、自分の好
  みの温度の燗酒を間違いなく得ることができる(誤差1度以内に抑えられる)。
  理想と考えられてきた伝統的な湯煎による方法も別表が示すように上下の温度差は
  予想以上に大きく、温度の均一性に関してはカンキャップ法のほうがはるかに優れ
  ている。また、誰もが気になる酒質への影響であるが、筆者が行ったテストの結果
  では、湯煎による燗酒との違いを見いだすことはできなかった。
   振り返ってみると、お燗の習慣が衰退した背景には、@毎日の生活が多忙になり
  手間暇を要する燗酒の習慣が敬遠されたA燗酒に合う料理が減少したB女性の地位
  向上と男性地位の弱体化に伴い、昔のように亭主のためにお燗をする女性が減少し
  たなどの原因が考えられる。
   しかし、日本料理とともに飲む燗酒には特有の旨さがあり、これを酌み交わせば
  心を通じ合わせることもできる。カンキャップ法によるお燗は、一度条件を設定す
  れば誰でも簡単に、しかも再現性よく目的に合っ、たお燗酒を得ることができる。
  今後、家庭内においては男性がお燗担当になり、料理担当の女性とともに酌み交わ
  せば、家庭は円満になり、清酒の消費も拡大するのではなかろうか。

   筆者がこのカンキャップ法を考案したのは、秋田県の株長泉本舗会長の齋藤昭
  一郎氏が「銚子の上部にアルミホイルを掛けて電子レンジでお燗をすればおいしい
  お燗酒ができる」と述べられたことに起因している。筆者がこの方法を実施したと
  ころ、アルミホイルがレンジの内壁に触れ火花が出たため、これを改良したのがこ
  のカンキャップ法である。素晴らしいヒントを与えて下さった齋藤会長に改めてお
  礼申し上げる。